北朝鮮の工作、文氏当選へ露骨に宣伝扇動 – Viewpoint



9年ぶり左派政権 文在寅大統領の韓国(4)

 大統領選直前の5日、ソウル南部の冠岳山で登山客が2枚のビラを拾い地元警察に届け出た。ビラには国政介入事件で広がったろうそくデモの一場面に似た写真と共にハングル文字で「腐るだけ腐った保守牌党を国民は反対します」「ろうそくを持った手で国民の大統領を選出しよう!」などと記されている。

 「牌党」とは聞き慣れない言葉だが、要は「保守の輩(やから)」という意味で、これまで北朝鮮が各種媒体を通じ李明博元大統領や朴槿恵前大統領など保守派の大統領を「逆賊牌党」などと称して非難してきた宣伝扇動用語だ。

 「腐るだけ腐った」とは国政介入事件で親友の崔順実被告と共に職権乱用や収賄罪などに問われ収監中の朴槿恵前大統領とその母体である与党・自由韓国党の洪準杓候補を指し、「ろうそくを持った手」は朴前大統領と与党に失望し、毎週末、ソウル中心街で数万人規模の政権退陣運動を繰り広げた市民を意味するとみられる。今回の選挙で左派の文在寅政権誕生を実現させるよう促し、韓国が再び対北融和策で莫大(ばくだい)な経済支援に乗り出すことを期待しているわけだ。

 北朝鮮ビラは「気球に乗せて韓国まで運ばれてきた」(警察関係者)といい、先月15日の故金日成主席生誕の日(太陽節)に合わせて飛んできたものが回収されたばかりだった。

 すでに北朝鮮は別の手段で今回の韓国大統領選に露骨に介入している。北朝鮮の対南工作に詳しい柳東烈・元韓国警察庁公安問題研究所研究官はこう指摘する。

 「北朝鮮は昨年12月、韓国国会で朴前大統領に対する弾劾訴追案が可決されるや憲法裁判所による弾劾是非の判断が出るのを待たず、インターネット版労働新聞、朝鮮中央通信、対南サイトのウリ(われわれ)民族同士、救国戦線など親北ウェブサイトを動員し、大統領選に関する対南宣伝扇動に力を入れ始めた」

 特にその“主力部隊”である統一戦線部所属の対南革命前衛隊である「反帝民戦」のサイト「救国戦線」は今年1月1日、「朴槿恵剔抉(てっけつ)に総決起」するよう呼び掛け、それ以降、保守系の洪準杓候補(自由韓国党)、劉承●候補(正しい政党)だけでなく、彼らとの候補一本化が注目された中道左派の安哲秀候補(国民の党)に対しても辛辣(しんらつ)な批判を浴びせている。北朝鮮に融和的な左派系候補、中でも当選可能性が高かった文在寅候補を間接的に支持しているに他ならない。

 今回の大統領選で北朝鮮が待ち望んだ文候補が当選したが、その先にはいったい何があるのか。韓国学中央研究院の梁東安名誉教授は近著『崖っぷちの韓国自由民主主義』の中で次のように警鐘を鳴らしている。

 「過去2回の南北共同宣言の効力が再び生じ、南北間で政府や民間の交流が活発になれば低い段階の連邦制統一はそれほど難しくなく、そうなれば遠くない将来に連邦制統一が実現するのではないか。そして連邦制統一は共産化統一に近づくものではないだろうか」

 かつて金日成主席は韓国への工作が失敗した最大の理由に韓国内の地下組織が弱かったことを挙げ、その再構築を教示した。「北の指令を受け動く、まだ摘発されていない地下組織が10団体以上存在する」(柳元研究官)という今の韓国に文政権が誕生したことは北朝鮮にとって“慶事”に違いない。

(ソウル・上田勇実)

=終わり

●=日へんに文




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